【受動型ASD】見過ごされやすい自閉スペクトラム症の特性と、自分らしく生きるための対処法
受動型ASDとは?他者に影響されやすい自閉スペクトラム症の特性
受動型の自閉症スペクトラム障害(ASD)は、ASDの特性の中でも特に他者からの影響を受けやすく、自己主張や主体的な行動が難しいという特徴が顕著なタイプです。
ASDは、主に「社会的コミュニケーションの困難さ」や「特定の行動や興味への強いこだわり」を持つ発達障害の一つですが、その現れ方は人によって多岐にわたります。
受動型ASDの人は、一般的なASDの特徴に加え、以下の傾向が強く見られます。
- 自己主張の困難さ
自分の意見や感情を抑え込み、他人の期待や指示に応えようとする傾向が強い。 - 同調性の高さ(表面的適応)
周囲に合わせようとするため、表面的には問題を起こさず、一見、社会的に適応しているように見える。 - 影響の受けやすさ
他者からの提案や誘いを断れず、結果的に自分の意思に反した行動をとってしまう。
この特性により、自分の本心と行動が乖離し、大きなストレスや二次障害(うつ病、不安障害など)の原因となることがあります。
発見が遅れがちな理由と受動型ASDの長所・短所
なぜ発見が遅れるのか
受動型ASDは、他のASDタイプ(積極奇異型、孤立型など)と比較して発見が遅れがちです。
これは、上記のような周囲に合わせる特性(表面的適応)があるためです。
表面上は「聞き分けの良い子」「真面目な人」と評価され、トラブルが少ないため、周囲がその困難さや違和感の兆候を見逃しやすいからです。
多くの場合、学校や職場での人間関係がうまくいかない、あるいは抑圧されたストレスが限界に達し、適応の問題や二次障害が顕在化してから初めて診断に至ることが多いです。
受動型ASDの長所と短所
受動型ASDの特性は、裏表一体の性質を持っています。
| 側 面 | 特 徴 |
| 長所 | ▫ 他者との交流そのものを避けず、明らかな孤立リスクは少ない傾向にある。 |
| ▫ 協調的で、集団のルールや他者の指示に従う姿勢があるため、協調性が重視される環境では評価されやすい。 | |
| 短所 | ▫ 周りの評価や期待に強く左右され、自分の意思を大切にした行動が難しい。 |
| ▫ 常に他者を優先するため、自己肯定感が低下しやすく、過剰なストレスを抱えやすい。 |
受動型ASDのための「自分を大切にする」対処法
受動型ASDの人がより自分らしく、社会に適応していくためには、「自分を理解し、自分を大切にする」ことが最も重要です。以下のスキルを身につけることが有効です。
1. 自己理解と自己表現の向上
自分の苦手なことや得意なこと、感じている感情を客観的に把握します。
- 感情のラベリング
「今、自分は疲れている」「この状況は不安だ」など、自分の感情を言葉にして意識する練習をします。 - アサーティブネス(自己表現)の練習
相手を尊重しつつ、自分の意見や気持ちを適切に伝える「断るスキル」を身につけ、不本意な誘いや指示に対して「NO」と言えるようにします。
2. ストレスマネジメントの確立
他者の影響を受けやすくストレスを溜め込みやすい受動型ASDにとって、ストレスを適切に処理する手段を持つことが不可欠です。
- 一人の時間を作る
他者からの影響を遮断し、純粋にリラックスできる安全な時間と空間を意識的に確保します。 - 感覚調整
自分の感覚過敏・鈍麻に合わせたリラックス法(例:アロマ、静かな音楽、特定の感触のアイテムに触れるなど)を見つけ、日常的に活用します。
3. 適切な支援と理解
受動型ASDは表面上の適応から見過ごされがちですが、困難を抱える心の病理は他のタイプと同じです。
専門家(精神科医、臨床心理士、カウンセラーなど)による診断とカウンセリングを受け、自分の特性に合った環境調整や対処法を学びましょう。
当事者や家族、支援者が受動型ASDへの理解を深めることは、自己同一性の確立と、より良い社会的適応への大きな一歩となります。







